私の弟
私には弟がいる。
13年前に我が家にやってきて、一瞬で空気になじみ、
秒殺で、家族のハートを鷲掴みした、
小さくて無口でかわいいかわいい弟がいる。
犬種はパグで、名前は「ゆうた」という。
昔のゆうたは、機敏なデブだった。人間でも一番もてるタイプだ。
走るのも飛ぶのも得意だった。
公園では大型犬と一緒に走り回り、
家では、毎朝毎朝飽きもせずセッセと階段を駆け上がり、
私や妹を起こしにきた。
30分しか出掛けていないのに、3年会えなかったんだったか?と
錯覚するような喜びよう。
喧嘩は、あとに引きずらない。
愛は惜しみなく。
しかし、要求は至って頑固に。
妥協はしません。特に食に関しては。
外で嫌なことがあっても、悲しいことがあっても、
ゆうたを抱っこすると、心拍数がスーと下がる。
ゆうたの小さな体に私のどろどろが吸い込まれて、
ゆうたに悪い気がする。
でも、ゆうたは至って穏やかで、 私の胸の中でいつまでも眠ってくれる。
そんなゆうたも13歳。
昔はドアを開けたとたん、飛びついてきたゆうた。
今は、眠っているそばにしゃがんで、体を触って、
「ただいま、ゆうた」と声をかけるまで私には気付かない。
気付くと尻尾を振って必死に立ち上がり、
唇を舐めてくれる。
原因不明の左半身麻痺で、左足を引きずりながらゆっくり歩く。
アスファルトの固い道でゆうたの足が削られるのがかわいそうと、
母は、お手製の小さいソックスを作った。
目もほとんど見えない。
呼んでもなかなか反応しない。耳もダメになったようだ。
おしりもすっかりダメになった。
一応、出そうだよ。。。とチラリと教えるようだが、
ほとんどの場合は間に合わず、オムツが手放せなくなった。
私が家を出てから3年。
たった3年でゆうたはすさまじいスピードで年老いた。
母は、私の母であり、妹の母であり、ゆうたの母でもある。
ゆうたの「トイレかも?!チラリ」は、一日に10回も20回も。
そのうちの何回かは、ゆうたの気のせいだったりするらしい。
しかし、母は息子のサインを見逃さず、機敏に行動し、
さっとオムツをはがし、外に連れ出し、
ゆうたが気のすむまで一緒に待つんだそうだ。
焦らせてはいけないんだそうだ。
そしてその話の後必ず、
「ゆうちゃんは偉いよ。頑張ってる」
という。
私は、その母の言葉にいつもひそかに涙が出てしまう。
今年の夏は暑い。
ゆうた、きばれ。私の弟。
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コメント
きばれきばれ。偉大な弟。
大きな愛で包まれた弟よ。
投稿: | 2008年8月18日 (月) 16時25分